やさしい顔の犬をつくる人

やさしい顔の犬をつくる人

キワム、《シェットランドシープドッグ》、アルスコーポレーション/chokigallery提供

和紙で犬を作るという作家を訪ねた。
神奈川県の静かな住宅街。建てて間もない家だった。

2階のアトリエには、作品や材料の和紙、そして一眼レフカメラや腕時計がいくつもあった。

凝り性であることは、見ればわかった。

やさしい顔の犬をつくる人
作家

「保育園の先生です。」

職業を聞いて驚いた。
今どき珍しくもないのだろうが、男の先生とは話したことがなかった。

以前は愛知の自動車工場で働いていたらしい。
大学を出たが、やりたい事が見つからず、“稼げる”と聞いたから、というのが理由だった。

ある日、工場の寮に、田舎の母親から一冊の本が送られてきた。
そこにはギターを持った男の写真があった。保育園の先生だという。

好きなギターを弾きながら働けるなら、悪くない。
そう思った。

彼は、その写真の男性が務める保育園を訪ね、そのまま先生になってしまった。

そんな人だった。

やさしい顔の犬をつくる人

幼稚園で子どもにせがまれて、紙で動物を作ったのが創作のきっかけだという。

何気なくTwitterにアップした和紙の犬が10万いいねの大バズり。
売ってくれという注文が殺到した。

とてもすべてをフリーハンドで作る時間はない。
犬の輪郭と、繊細な毛並みをデータ化した。犬種に合わせ微調整し、和紙に印刷する。

それを切り、曲げ、形にしていくと、紙の犬が、少しずつ立ち上がる。

彼の作る犬は、
自由でやさしい顔をしている。
作り手に、少し似ている。

文・吉川武志

やさしい顔の犬をつくる人

キワム、《ポメラニアン(オレンジ)、ポメラニアン(クリーム)》
アルスコーポレーション/chokigallery提供

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